シノプシス

真言宗円明院住職の小川貞純は、ニューヨークに住む日本人映画制作者夫婦に彼女の人生を語り、95歳で亡くなった。7才でお寺に里子に出されたこと、円明院というお寺を自身の手で建立したこと...ただ、女性として生きてきた思いは、まるでタブーであるかのように語りたがらなかった。 

その後、若い尼僧がその寺を継いだ事を聞き、夫婦は亡き老僧・貞純に導かれた様な気持ちで再び円明院を訪れた。貞純の生前・死後にかけて、語られなかった彼女のオンナの気持ちを探し求めた旅の中から、映画『円明院』は生まれた。

貞純の尼僧として生きてきた厳しい現実が露呈する一方で、彼女の人生の“語られなかった部分”から新たな謎が浮上する。物語は妻レイコの声で語られる。その中に、アメリカに移住している日本人女性、妻、また母として、自由とバランスへの鍵を貞純の人生の中に探す制作者のもう一つの旅が混在する。そうして、初めはシンプルで未完成だった尼僧・貞純のポートレートは、男性中心の日本の地方仏教界で生きる女性僧侶の生き様を映し出しながら、物語性と精神性豊かなジャンルを超えた私的探偵ドキュメンタリーへと変貌してゆく。